第09回 時間旅行はBBCで
このアーカイヴズというのが凄い。1950年代以降のさまざまな録音がストックされていて、当方で検索して注文すると、あっという間に録音がCDやCD-R に収められて送られてくる。アーティストによっては、往時の活躍に比べてあまりストックされていない人もいるから、アーカイヴズ全体としてはまだ構築途上なのかもしれない。しかし、それでもすでに膨大な量があり、しかもきちんと管理されている。
このあたりはさすがに国営放送という印象で、民放ではなかなか真似ができないことだろう。
録音というものの面白さの一つは、さまざまな時代を一瞬に駆けめぐれることだと思う。われわれはどうあがいても、今この時を離れることはできない。しかし録音は、さまざまな過去を甦らせることができる。そうして現在と過去との関係を考えていると、未来の姿がおぼろげながら見えてくることがある。脳内時間旅行の醍醐味は、まさにその瞬間にある。
さて、5月1日と8日のBBC Concertでは、フィンランドの指揮者エサ=ペッカ・サロネンのコンサートをお送りする。1日は当時まだ27歳のサロネンが、最初の手兵となったスウェーデン放送交響楽団を指揮した1985年のライヴ。8日はそれから17年後、現在も音楽監督をつとめるロスアンジェルス・フィルハーモニックを指揮した、2002年のライヴ録音だ。
指揮者サロネンは、17年の歳月をどのように過ごしたか。それが聴きものだ。BBCのアーカイヴズだからこそ可能な時間旅行を、お楽しみに(今後放送ご希望のアーティストなど、ぜひリクエストをお寄せください。探してみます)
山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963生まれ。「レコード芸術」を始め、音楽雑誌、CDのライナーなどで活躍中。クラシックの演奏史の中に現代を位置づける活動を行っている。最近特に海外盤に目立ついわゆる「ヒストリカルもの」(放送局のライブ音源をCD化したものやSPやLPの時代の録音のCD化)には滅法強い。
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