第08回 ヤルヴィ家の父子鷹
巨大組織の世襲は、簡単なようでとても難しい。安定成長期ならいいが、混乱期になると無理と矛盾ばかりが露呈する。
では、芸能や芸術の世界はどうだろう。歌舞伎や落語の世界では、今まさに盛大な襲名披露興行が行なわれている。伝統ある名前に新たな花を添えるか、それともその重さに負けてしまうかは、彼ら自身の今後の精進にゆだねられている。何事も、結局は芸次第というわけだ。
クラシックの世界も同様である。「組織とその権力」を単純に相続するよりもずっと、個人の資質がむき出しに問われる。エーリヒ・クライバーの息子カルロス、アルヴィート・ヤンソンスの息子マリス、あるいは母方の姓を名乗った、アノーソフの息子ロジェストヴェンスキー、マルケヴィッチの息子カエターニなど、息子たちはみな自身の実力で地位を得ている。
エストニア出身の指揮者ネーメ・ヤルヴィの二人の息子たち、パーヴォとクリスチャンも、やはり自らの音楽性を頼りに活動の場を拡げつつある。ただ、ヤルヴィ家が他の「父子鷹」指揮者たちとちょっと違うのは、父も現役で、息子たちに負けじとばかりの健在を示していることだ。こういうケースは珍しく、また微笑ましい。それぞれのさらなる活躍を祈ろう。
山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963生まれ。「レコード芸術」を始め、音楽雑誌、CDのライナーなどで活躍中。クラシックの演奏史の中に現代を位置づける活動を行っている。最近特に海外盤に目立ついわゆる「ヒストリカルもの」(放送局のライブ音源をCD化したものやSPやLPの時代の録音のCD化)には滅法強い。
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