第48回 黄金時代の夢
ブームの再来を早い段階で意識づけたのは、アバド率いるルツェルン祝祭管弦楽団によるマーラー演奏だろう。アバドという人自身はベルリン・フィルのシェフになる以前もその最中も、マーラーを絶えず指揮し続けている人だが、マーラー・チェンバー・オーケストラを中心にゲスト・メンバーで強化拡大したこのオーケストラを手にしたときから、そのマーラー演奏は新しいエポックを迎えたようである。
そしてそれはそのまま、音楽界全体の潮流の変化をも示していた。マーラー・ブームの再来と、そしてかつてのカラヤン時代の華やかなザルツブルクを想わせるような、「音楽祭の都」としてのルツェルンの浮上。ルツェルン音楽祭も1938年からの長い歴史を持ち、カラヤンはここを重視してベルリン・フィルなどと一緒に必ず演奏会を開いていたほどなのだが、オペラ中心のザルツブルクに較べると、どうしても影に隠れがちだった。
しかし今や、シンフォニーの分野においてはザルツブルクに勝るとも劣らぬ豪華さと話題性を誇っている。その中心にあるのがマーラーの交響曲なのだ。9月最終週の「ユーロ・ライヴ・セレクション」では、ドイツ語圏の超一流交響楽団が顔を揃えた同音楽祭の模様をお送りする。どうぞお楽しみに。
(山崎浩太郎)
山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963生まれ。「レコード芸術」を始め、音楽雑誌、CDのライナーなどで活躍中。クラシックの演奏史の中に現代を位置づける活動を行っている。最近特に海外盤に目立ついわゆる「ヒストリカルもの」(放送局のライブ音源をCD化したものやSPやLPの時代の録音のCD化)には滅法強い。
山崎浩太郎のはんぶるオンライン
舩木篤也(ふなきあつや)
1967年生まれ。音楽評論家。「読売新聞」で音楽評を担当、「レコード芸術」「ぶらあぼ」など音楽誌に定期的に寄稿し、公演プログラムやディスクの解説、翻訳も手がける。特にドイツ音楽全般に関心あり。ワーグナーは生涯的なテーマだと考えている。演奏の前に、まずは作品を重んじたい。東京芸術大学ほかでドイツ語講師。共訳書に『アドルノ 音楽・メディア論集』(平凡社)

