第05回 40年目のリンパニー
ウッドが1944年に亡くなった後、その「跡目」を誰が継ぐべきかで数年間混乱が続いたが、1950年、マルコム・サージェントがプロムスの常任指揮者になったことで、ウッドの後継者をめぐる騒動は片がついたのである。サージェントは以後1967年に亡くなるまでプロムスの主柱として活躍した。プロムスで演奏した作品は延べ2402曲、これはウッドに次ぐ第2位の曲数だそうで、まさにプロムスの「第2の顔」というにふさわしい。
3月6日と 13日の「BBC Concert 」では、このサージェントによる演奏会と、彼を記念する演奏会とを続けて放送する。6日は1954年、つまり第60回目の年にサージェントが指揮した「ラスト・ナイト」。例年のお祭り騒ぎが楽しい「ラスト・ナイト」だが、そのスタイルは半世紀前にはすでに確立されていたことが、この貴重な録音でわかる。
13日の方はそれから40年後、第100回の記念年に開催された「サージェントに捧げる」演奏会。サージェントゆかりの作品が演奏されるが、面白いのは、40年後のこの演奏会にも1954年と同じソリストが参加していることだ。
そのソリストとはモーラ・リンパニー。1916年生まれで、イギリスを代表するラフマニノフ弾きとして有名なこの女性ピアニストは、ウッド時代の 1938年にプロムスへデビューしたという。1994年の演奏会は、彼女のちょうど60回目のプロムス出演にもあたっていたという。
40年の歳月を隔てて、同じピアニストの演奏を2週続けて聴けるなんて、まさに録音文化の醍醐味であろう。bbcのアーカイヴズの底深さは、ほんとうに素晴らしい。
山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963生まれ。「レコード芸術」を始め、音楽雑誌、CDのライナーなどで活躍中。クラシックの演奏史の中に現代を位置づける活動を行っている。最近特に海外盤に目立ついわゆる「ヒストリカルもの」(放送局のライブ音源をCD化したものやSPやLPの時代の録音のCD化)には滅法強い。
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