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トップページ > 連載コラム「CLASSICのススメ」第37回 アバドの集中

連載コラム「CLASSICのススメ」

オペラを、コンサートの場で演奏することは珍しくない。それも全曲ではなく、単独の幕を取り出すことも多い。

ワーグナーの作品でよくそうしたことが行なわれるのは、彼の巨大な歌劇や楽劇を、十全な形で上演するのが困難なためである。コンサート形式での一幕だけの抜粋上演なら、視覚的要素を捨て、人数をしぼることで限られた資材を集中できる。聴覚的要素、つまり音楽面に限定すれば、指揮者のコントロールが行き届きやすくなるという利点もある。

そうしたことから、《ワルキューレ》の第一幕や第三幕、《トリスタンとイゾルデ》の第二幕などは、よく取りあげられる。これらの幕は、ほとんどの音楽が長大なソロか二重唱だけでできているからだ。

だが、《ローエングリン》第二幕はどうだろう。登場人物はオペラ全幕と同じで、大合唱団も必要という点では、けっして向いていない。だから、一九八三年のエジンバラ音楽祭でアバドがこの幕だけを取りあげて演奏したのは、とても珍しい、異例のことだった。

その主目的は節約ではなく、集中にあったのだろう。幸福に満たされたはずの盃の中に、呪いの一滴が注がれる。そして猜疑心の波が生じ、やがて悲劇が渦まいていくさまを、ソロから大アンサンブルへの拡大の過程で、じっくりと描き出す。アバドは視覚的要素を聴衆の想像力にゆだねて、オラトリオのように音へ集中することで、そのドラマを築こうとしたのである。

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963生まれ。「レコード芸術」を始め、音楽雑誌、CDのライナーなどで活躍中。クラシックの演奏史の中に現代を位置づける活動を行っている。最近特に海外盤に目立ついわゆる「ヒストリカルもの」(放送局のライブ音源をCD化したものやSPやLPの時代の録音のCD化)には滅法強い。
山崎浩太郎のはんぶるオンライン

「BBC Concert」 ~アバドのローエングリン第2幕/エジンバラ音楽祭1983~

10月8日(日)22:00~24:00

出演:山崎浩太郎/音源提供:BBC

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