第35回 帝王のレコード
しかしかれは、ただの指揮者だった。どんなに豪壮華麗な響きをオーケストラから導き出そうと、それは瞬時に消えていく。永遠に残り、聴きつがれていくような名曲を書き上げる作曲家ではなく、ただの指揮者だった。それでも、カラヤンという名前とその存在は、没後17年を経た現在も色あせることなく、クラシック界を象徴するものとして、光り輝いている。
彼は、指揮者が永遠の名声を博すためにはどうすべきか、自らが不在となっても、この世にあまねく在るためにはどうすべきか、よく知っていた。
レコードである。かれはつねに最新の技術を用いて、永遠に残るレコードに、自らの芸術をとどめていった。SP、LP、CD、さらに映像ソフト。生前のカラヤンが知る由もなかったDVDやインターネットの時代にも、その演奏は記録となって残る。
そのレコードの中に、カラヤンは自らの何を、どのような姿を、とどめようとしたのか。いま、あらためて聴きなおしてみよう。
山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963生まれ。「レコード芸術」を始め、音楽雑誌、CDのライナーなどで活躍中。クラシックの演奏史の中に現代を位置づける活動を行っている。最近特に海外盤に目立ついわゆる「ヒストリカルもの」(放送局のライブ音源をCD化したものやSPやLPの時代の録音のCD化)には滅法強い。
山崎浩太郎のはんぶるオンライン
スペシャル・セレクション ~ザルツブルクが生んだもう一人の大スター、カラヤン~
2006年8月14日~19日 8月21日~26日(月~金)12:00~18:00、(土)12:00~17:00
出演:山崎浩太郎/音源提供:BBC

