第33回 ゲルギエフの《ボリス》初稿版
2000年度の音楽之友社主催の「レコード・アカデミー賞」を受賞した名盤だが、この盤の特長は、その演奏の素晴らしさだけでなく、1869年版と1872年版という2つのヴァージョンを、ともに収録した点にあった。
大ざっぱに言えば、後者の1872年版というのが、私たちのよく知っている《ボリス》の版である。それに対して1869年版というのは、ムソルグスキーが最初に書き上げた版だが、劇場側から上演を拒否されて、お蔵入りしてしまったものだ。
拒否された理由の一つは、女声がほとんど出てこない男声ばかりの出演で、地味すぎるということだった。そこでムソルグスキーは華麗なポーランドの場面などを書き足し、公女マリーナの役を追加して1872年版とし、ようやく翌73年のサンクトペテルブルクでの初演にこぎつけた。
こうして 1869年版の初稿は忘れられてしまったのだが、近年は主役ボリスのドラマに凝縮されたこの版が、次第に関心を集めるようになっている。その復活の最大の功労者が、CDや各地での上演を指揮したゲルギエフその人なのである。2003年には日本でも上演されたこの初稿版を、2002年プロムスの演奏会形式公演で聴いてみよう。
山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963生まれ。「レコード芸術」を始め、音楽雑誌、CDのライナーなどで活躍中。クラシックの演奏史の中に現代を位置づける活動を行っている。最近特に海外盤に目立ついわゆる「ヒストリカルもの」(放送局のライブ音源をCD化したものやSPやLPの時代の録音のCD化)には滅法強い。
山崎浩太郎のはんぶるオンライン
BBC Concert ~PROMS2002 ゲルギエフのムソルグスキー/歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」(1869年版)~
7月2日(日)22:00~24:30 音源提供:BBC
出演:山崎浩太郎/音源提供:BBC

