第28回 「問題音源!?」ショルティ
1961 年にコヴェント・ガーデンの王室歌劇場の音楽監督となって以降、イギリスとは縁の深かったショルティだけに、さまざまなオーケストラとのライヴ録音が bbcから放送されたのではないかと思う。しかし、現時点でbbcのアーカイヴズが提供しているのは、1963年のワーグナー・コンサート(こちらも以前 BBC Concertで放送した)と、今回の1968年のコンサートとの2種しかない。
大物指揮者だけに権利関係などの問題があるのかも知れず、残念だがこれは今後の進展を待つほかない。というわけで、貴重なアイテムとなった今回のコンサートなのだけれど、実はこれにも2つ問題があった。
ひとつは、後半の《英雄》交響曲のオリジナル音源が行方不明で、LPに転写した33回転盤(トランスクリプション・ディスクという)からの音源しかないこと。もうひとつは、前半の2曲め、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番が、BBCレジェンズですでにCD化されていることである。
難しい問題だが、状態を確認するために音源を取り寄せて聴いてみた結果、放送することを決めた。まず転写盤からの音源にはLP特有のチリチリ・ノイズがあるし、音質もやや甘いが、音源の貴重さをかんがみれば許容範囲にあると判断した。
もうひとつの、すでにCDがあるという問題も、聴き比べてみて解決した。オリジナル音源の生々しさと明快さは、CDをはるかに上回っている。これなら、あえて放送する意義も充分にある。コピー容易なデジタル時代になっても、やはりオリジナルは、オリジナルならではの存在価値を持っているのだ。
みなさんはどう判断されるか。どうぞお楽しみに。
山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963生まれ。「レコード芸術」を始め、音楽雑誌、CDのライナーなどで活躍中。クラシックの演奏史の中に現代を位置づける活動を行っている。最近特に海外盤に目立ついわゆる「ヒストリカルもの」(放送局のライブ音源をCD化したものやSPやLPの時代の録音のCD化)には滅法強い。
山崎浩太郎のはんぶるオンライン

