第20回 ピリオド楽器のワーグナー
4週のうち、前半はイギリスのバーミンガム市交響楽団とオーケストラ・オブ・ジ・エイジ・オブ・エンライトゥンメント、後半はベルリン・フィルという構成になっている。
オーケストラ・オブ・ジ・エイジ・オブ・エンライトゥンメントというのは、いうまでもなくピリオド楽器の団体で、ノリントンの指揮で録音したcdなどで知られている。面白いことにラトルがこの団体を指揮する機会は、演奏会ではなくオペラ(セミ・ステージ形式の上演も含めて)に限られているようだ。モーツァルトの《コジ・ファン・トゥッテ》はcd化されているし、《フィガロの結婚》も以前に当番組で放送した。
モーツァルトの作品をピリオド楽器で演奏するのは、現代ではむしろ当然のこととなっているから、それでラトルがモーツァルトのオペラのためにこの団体を起用したのだろうとは、容易に想像がつく。ところが今回の放送で取り上げられるのは、ワーグナーなのである。ベートーヴェン以降の音楽では基本的に現代楽器のオーケストラを使っているラトルが、ワーグナーでなぜピリオド楽器なのだろう。
ラトルはワーグナーでも《トリスタンとイゾルデ》や《パルジファル》のような 1850年代末以降の楽劇では、現代楽器のオーケストラ(ロッテルダム・フィルなど)を指揮して上演している。しかし今回の《ラインの黄金》は1853年から翌年に作曲されたもので、書法的にはまだ極端に複雑な音楽ではない。その明快な響きを活かすにはピリオド楽器こそふさわしい、とラトルは考えたのではないだろうか。
さて、その成果は如何。
山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963生まれ。「レコード芸術」を始め、音楽雑誌、CDのライナーなどで活躍中。クラシックの演奏史の中に現代を位置づける活動を行っている。最近特に海外盤に目立ついわゆる「ヒストリカルもの」(放送局のライブ音源をCD化したものやSPやLPの時代の録音のCD化)には滅法強い。
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