第14回 ロンドンのハイティンク
1929年にアムステルダムで生まれたハイティンクは、28歳でオランダ放送フィルの首席指揮者になり、1961年に32歳でコンセルトヘボウ管弦楽団の常任指揮者(64年からは芸術監督)となった。1988年、オーケストラの創立百周年を期に勇退するまで、四半世紀以上も母国の名門を統率していたのである。
いわば名実共に「オランダのシンボル」的な存在だったわけだが、60歳をすぎた1990年代からは、一転して活動の場をオランダの外に移すようになった。そしてその新たな拠点となったのが、イギリスのロンドンである。それ以前にもロンドン・フィルの芸術監督を70年代につとめるなど、早くから関係を強めてきたこの町の、コヴェント・ガーデンの王室歌劇場の音楽監督というのが、彼の新たな主要ポストだった。
その実直で虚飾のない、ていねいで柔和な音楽づくりが、ロンドンの聴衆に愛された一因なのだろう。ハイティンクは2002年まで、15年間もこの歌劇場に留まることになった(陰謀うずまく歌劇場の職務というのは、オーケストラよりもずっと過酷である)。その後は急逝したシノーポリの後を引き受けて、ドイツのドレスデン・シュターツカペレの首席指揮者となっている。
今回のBBC Concertでは、ハイティンクが「第2の故郷」ロンドンに、ボストン交響楽団とドレスデン・シュターツカペレを引き連れて登場した演奏会を、2週続きでお送りする。
アメリカとドイツのこの二つのオーケストラは、それぞれの国において、とりわけ落ちついた、木質の響きを持つことで有名な存在だ。この点でハイティンクの音楽性ともよく似ているだけに、相性はぴったりといえる。それぞれに調和のとれた美しい響きを、ご堪能あれ。
山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963生まれ。「レコード芸術」を始め、音楽雑誌、CDのライナーなどで活躍中。クラシックの演奏史の中に現代を位置づける活動を行っている。最近特に海外盤に目立ついわゆる「ヒストリカルもの」(放送局のライブ音源をCD化したものやSPやLPの時代の録音のCD化)には滅法強い。
山崎浩太郎のはんぶるオンライン

